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水性インクジェットインク向けMPD

ノズル保湿と高速乾燥性の両立は、インクジェットインク設計における重要な課題です。MPDは独自の分子構造により、優れた吐出安定性とレオロジー安定性を実現し、高速印字環境においても安定したインク性能に貢献します。

カラフルなパターンを平らな素材の表面に印刷している産業用印刷機のクローズアップ。

高速デジタル印刷における保湿剤設計の課題

デジタル印刷業界では、環境負荷低減の要求が高まる中、溶剤系インクから水性インクへの移行が加速しています。一方で、水性インク設計には「乾燥性」と「ノズル保湿性」を両立するという大きな課題があります。

生産性を向上させるためにインキの乾燥性を加速させると、プリントヘッドのノズル部分でインクが乾燥しやすくなり、ノズル詰まりや吐出不良の原因となります。反対に、グリセロールやPGなどの高沸点保湿剤を増やすと、基材上での乾燥遅延、粘度上昇、レオロジー不安定化を引き起こし、印字鮮明性や再現性を損なう場合があります。従来のグリセロールやPG(プロピレングリコール)などの水性インキでは、このトレードオフ制御が重要な設計課題となっています。

MPD
(3-メチル-1,5-ペンタンジオール)

MPDの化学構造

PG
(プロピレングリコール)

プロピレングリコール(PG)の化学構造

グリセロール
 

グリセロールの化学構造

図1:分子構造
MPDのメチル分岐は立体障害を引き起こし、その物理的挙動は、直鎖状ジオールやグリセロールのような親水性トリオールとは異なります。

クラレの解決策:優れたレオロジー安定性と顔料分散性

ノズル乾燥抑制と高速乾燥性を両立

MPDは、高性能保湿剤として機能する分岐ジオールです。ノズル内部での乾燥抑制と、基材上での迅速な乾燥性という相反する要求特性をバランス良く両立し、安定したインクジェット印刷に貢献します。

  • バランスの取れた疎水性による最適な乾燥性能:MPDは高沸点(249℃)によりノズル内部の乾燥を防ぎつつ、メチル分岐が適度な疎水性を付与します。これにより、吐出後は水との過剰な相互作用を抑え、基材上での乾燥を効率的に促進します。
  • 優れた顔料分散性とレオロジー安定性:MPDの分岐構造は、水溶性ポリマー結合剤と顔料粒子間の凝集を抑制し、安定した分散状態を維持します。これにより、低粘度化と顔料分散安定性を両立し、高速印字環境においても安定した印刷品質に貢献します。

高せん断条件下でも安定した吐出性を実現

圧電式プリントヘッドでは、インクに極めて高いせん断負荷が加わります。このような条件下では、一般的な保湿剤は粘度変化や流動特性の不安定化により、安定した吐出性能を維持できない場合があります。MPDはこうした高せん断環境下でも優れたレオロジー安定性を維持し、安定したインクジェット印刷に貢献します。

  • 高せん断下でも安定したニュートン流動特性:MPDは熱による負荷が加えられた条件下や高せん断条件下でも粘度変化を抑制し、最大100,000 s-1の高せん断領域においても安定したレオロジー特性を維持します。これにより、高速印字環境でも安定した吐出挙動を実現します。
  • サテライト滴を抑制しシャープで安定した印刷品質に貢献:優れたレオロジー安定性により、液滴分裂時に発生しやすいサテライト滴を抑制します。その結果、高速印刷条件下でも、にじみを抑えたシャープで高精細な印刷品質に貢献します。
グラフ:予測可能なニュートン流体挙動により、ノズルの信頼性を確保。

図2:高せん断環境下におけるレオロジー安定性
一般的な保湿剤(グリセロールなど)は、高せん断条件下で粘度変化が大きくなる場合があります。一方、MPDは最大100,000 s-1の高せん断領域においても、安定したニュートン流動特性を維持します。これにより、プリントヘッドにおける精密で安定したインク吐出制御に貢献します。

グリセロール:
サテライト滴が多く発生

グリセロール

MPD:
サテライト滴の発生を大幅に抑制

MPD

図3:高速印字を支える安定した液滴形成
MPD(右)は優れたレオロジー安定性により、液滴形成の安定性を向上させます。グリセロール(左)と比較してサテライト滴の発生を効果的に抑制し、高速印字条件下でも、にじみを抑えたシャープで安定した印刷品質に貢献します。

インクジェット用保湿剤におけるMPDの特長

以下の技術比較では、クラレのMPDを業界標準の保湿剤と比較評価しています。高沸点によるノズル乾燥抑制と、高せん断条件下におけるレオロジー安定性を両立します。従来の保湿剤で課題となる「乾燥性」と「吐出安定性」のトレードオフに対し、MPDがどのように貢献するかをご確認ください。

物性標準グリセロールプロピレングリコール(PG)MPD
沸点290°C188°C249°C
粘度安定性高せん断下で粘度変化が大きい中程度優れたニュートン流動特性
顔料分散性凝集しやすい中程度優れた分散安定性
乾燥速度遅い中程度速い
噴射品質サテライト滴が発生しやすい吐出安定性に課題サテライト滴を効果的に抑制

MPD – The Architect of Resilience. Liquid by Design.

MPD(3-メチル-1,5-ペンタンジオール)は高機能材料向けに開発された独自のジオールです。ポリウレタンやポリエステルなどの高機能ポリマー原料として優れた性能を発揮するだけでなく、インクジェットインク用途では多機能溶剤として機能します。幅広い用途における、高性能な材料設計に貢献します。

白い背景の上で、なめらかな波状のカーブを描く抽象的な青い水しぶき。

次世代の高性能材料設計へ

加工性と長期耐久性を両立する設計へ。クラレが培ってきた分子設計の知見により、厳しい構造要件やレオロジー制約に応える材料設計をサポートします。

貴社のインク設計で、MPDの性能をご評価ください MPDの優れたレオロジー安定性、吐出安定性、濡れ性を、ぜひ貴社独自のインク配合でご確認ください。