柔軟性と長期安定性を両立する材料設計
従来、TPU(熱可塑性ポリウレタン)で低硬度を実現するには、可塑剤の添加やハードセグメント量の低減といった手法が用いられてきました。しかし、これらのアプローチはいずれも長期的な性能において大きな課題を伴います。
- 柔軟性低下と可塑剤ブリードアウトの課題:外部可塑剤は熱力学的に不安定であり、時間の経過とともに表面へ移行します(ブリードアウト)。これにより、TPUは本来の柔軟性を失い、脆くなります。
- 接着不良と表面品質への影響:移行した可塑剤は離型剤として作用し、複数の材料からなる構造体(例:フットウェア)において層間剥離を引き起こすほか、他の基材との接着を妨げます。
- 柔軟化による耐久性能低下:一般的に、ハードセグメント含有量を低減して柔軟性を高めると、耐薬品性や圧縮永久歪みなど、TPUに求められる重要な特性が低下しやすくなります。
クラレの解決策:添加剤に頼らない分子設計による柔軟性
本質的な柔軟性、長期にわたる完全性
クラレポリオール(特にP-3010やP-3050などの高分子量グレード)を使用することで、可塑剤を使用せずに低硬度TPUを製造することが可能となります。MPDのメチル分岐構造が分子鎖の規則配列を抑制することで、高分子量の直鎖系ポリオールで課題となる結晶化を抑制します。
クラレポリオールは、ポリマー主鎖そのものに分子運動性を持たせる設計となっており、長期にわたり柔軟性を維持します。
可塑剤フリーの設計がもたらす実用的性能
- 優れた機械物性と低硬度の両立:高分子タイプのクラレポリオールを配合することにより、優れた機械強度や耐薬品性を維持しながら、低硬度で柔軟性に優れたTPU設計を可能にします。
- マイグレーションリスクの回避:コンベアベルトや高性能フットウェアなどの用途において、可塑剤のブリードアウトを防ぎ、外観の均一性と長期的な接着信頼性を確保します。
- 可塑剤フリーによる規制対応:可塑剤を使用しない設計により、REACHやRoHS指令への対応を容易にします。また、有害物質の溶出リスク低減にも貢献し、安全性に配慮したエラストマー設計を可能にします。
性能検証:硬度の長期安定性
右のデータは、クラレポリオールが安定したショアA硬度を維持するのに対し、標準的な直鎖ポリオールは結晶化と添加剤の損失により著しく硬化が進むことを示しています。
図1:TPU用途におけるショアA硬度保持率
クラレポリオール(P-3010 / P-3050)は、時間の経過による硬度上昇を抑え、長期にわたり安定した柔軟性を維持します。一般的な直鎖型ポリオールでは、結晶化が進行することで徐々に硬くなる一方、MPDベースのクラレポリオールは結晶化を抑制し、ショアA硬度の変化を低減します。