熱力学的に最適化された設計
NDは、隣接する炭素数のジオールと比較して低い融点を示します。これにより、加熱負荷を抑え、優れた取り扱い性に貢献します。
長鎖アルキル構造(C9)の高耐久設計
NDをポリマー構造に組み込むことで、C9由来の疎水構造が優れた耐加水分解性を発揮します。さらに、独自に結晶性を制御することによって分子パッキングを最適化し、高い強度、柔軟性、透明性をバランスよく発現します。
UV硬化システム向けの低刺激性設計
NDは、UV硬化システムにおけるジアクリレートモノマー用途で、低刺激性と優れた耐久性を両立します。材料本来の性能を維持しながら、作業安全性や環境・安全衛生(EHS)対応を考慮した材料設計に貢献します。
クラレのND:加工性と耐久性を両立するC9構造
高性能ポリマー開発では、「取り扱いのしやすさ」と「長期耐久性」の両立が長年の課題でした。クラレのNDは、奇数炭素(C9)由来の独自の分子設計によって、この課題に新たなアプローチを提供します。
C9の長鎖構造による高い疎水性によって耐加水分解性を向上させつつ、奇数鎖特有の非対称な結晶構造が格子エネルギーを低減し、融点46℃という優れた取り扱い性を実現します。これにより、NDは高い耐久性を維持しながら加工負荷を低減し、高性能樹脂の設計自由度向上に貢献します。
図1:奇数炭素構造による優れた加工性
クラレのND(C9)は、融点46℃という優れた加工特性を示します。従来のC10系材料では、流動性維持のために追加加熱が必要となる場合がありましたが、NDは加熱負荷を低減し、優れた取り扱い性に貢献します。
NDが切り拓く次世代材料設計
ND(1,9-ノナンジオール)は、独自のC9構造を持つ高機能ジオールです。従来の短鎖ジオールで課題となっていた加工性、耐久性、安全性に対して新たなアプローチを提供し、配合設計の自由度を拡張します。クラレの分子設計技術が、具体的な用途でどのような価値を発揮するのかをご紹介します。
1. トナーバインダー:結晶性ポリエステル樹脂
課題:現代の印刷技術では高速印刷と省エネルギー性能の両立が求められています。一般的なトナー樹脂は高い定着温度を必要とすることで、ウォームアップ時間の長期化や消費電力増加につながってしまうため、環境負荷低減への対応が課題となっています。
クラレの解決策:「シャープメルト性」を実現するND設計
NDをポリエステル主鎖に組み込むことで、約46℃で急激に粘度が低下する結晶性ドメインを形成します。これにより「シャープメルト性」と呼ばれる特異な溶融挙動を実現します。
- ウォームアップ時間の短縮:固体から液体への相転移が速やかに進行するため、プリンター起動時間の短縮に貢献します。
- 消費電力とCO₂排出量の低減:定着工程に必要なエネルギー消費を低減します。これにより、装置全体のCO₂排出量削減にも貢献します。
- 高速印刷に適した優れた流動性:ND系樹脂は溶融時の粘度が低く、高速印刷条件下でも優れた流動性と基材への濡れ性を発揮します。
図2:急峻な融解挙動(シャープメルト性)
DSC(示差走査熱量測定)の結果から、ND系樹脂は狭い融解温度範囲で急速に融解することが確認されています。この優れた熱応答性により、優れた加工特性を発揮します。
※ AA=アジピン酸、PBA=ポリブチレンアジぺート
2. UV硬化性モノマー NDDA:低刺激性と高性能を両立
課題:業界標準の反応性希釈剤である1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)は、皮膚刺激性や感作性への懸念があるため、製造現場では厳格な取り扱い管理が求められています。その結果、環境・安全衛生(EHS)対応や規制対応における負担が課題となっています。
クラレの解決策:安全性と性能の両立を可能にするND由来ジアクリレート(NDDA)
- 低刺激性による作業安全性向上:NDDAはHDDAよりと比較して一次刺激指数(PII)が低く、作業者への負担を軽減します。これにより、安全性の向上とともに、規制対応や表示義務の簡素化にも寄与します。
- 構造由来の優れた柔軟性:C9の長鎖構造により、硬化後の材料に優れた靭性と耐衝撃性を付与します。これにより、UV硬化系で課題となりやすい脆性の発現を抑制します。
- 高速硬化プロセスへの適合性:硬化後のフィルムにおいて優れた伸長性と柔軟性を確保しながら、高速硬化プロセスへの適合性も維持します。
3. NDのその他の応用例:分子設計から素材性能まで
CASE用途およびその他 マテリアル設計の可能性を拡張
NDは、幅広い高性能材料設計に対応可能なC9系ジオールです。ポリウレタン分野では、要求性能の高いCASE用途において、ポリオールの主成分や鎖伸長材として優れた性能を発揮します。
さらに、ポリウレタン以外の用途においても、C9長鎖構造に由来する柔軟性、耐久性、低刺激性を活かし、弾性に優れたポリエステル樹脂、高安定性の可塑剤、低刺激性(低PII)ジアクリレートモノマーなど、多様な材料設計に貢献します。
お客様の用途や性能要件に応じた最適な材料ソリューションをご提案します。
NDがもたらす性能バランス
クラレのNDは、従来の直鎖ジオールでは両立が難しかった加工性、耐久性、エネルギー効率に対して新たな価値を提供します。分子構造に由来するデータを通じて、材料設計における重要パラメータを定量的に示し、再現性の高いポリマー設計を可能にします。
| 物性 | 物性影響 | |
|---|---|---|
| 融点 | 46 °C | ポリエステル樹脂においてシャープな融解挙動を示します。 |
| 粘度(60℃) | 33 mPa·s | 超低温で溶融する特性により、VOC増加といった悪影響を伴うことなく、溶剤のような高い流動性を実現します。 |
| 水酸基価 | 700 mgKOH/g | ポリエステル合成において、安定した反応と再現性の高い材料設計を実現します。 |
次世代の結晶性樹脂の設計
溶融効率と最終製品の耐久性を、どちらも妥協しない設計へ。クラレとともに、C9ケミストリーがもたらす熱力学的メリットを最大限に活用しませんか。